「私の本音は今日、尊いものになりました」
ロリータ服でギターを弾き語る異色のシンガーソングライター橋爪ももが、6月7日(金)、SHIBUYA TAKE OFF7にてワンマンライヴを開催した。1stフルアルバム『本音とは醜くも尊い』の発売を記念したもので、ライヴタイトルは【赤裸々】。2017年のメジャーデビュー以来自主企画イベント等は行ってきたものの、ワンマンは初。押し殺して来た本音を曲という虚構に封じ込め、表現することで昇華する、迫真のステージを繰り広げた。

スクリーンに「昔或るところに…」と縦書きの文章が映し出され、老婆のような女性の朗読が暗闇に響く。アルバム『本音とは醜くも尊い』収録の12曲には各主人公の秘められた心が赤裸々に綴られていて、今宵その者たちの物語が奏でられるのだ、と示す幕開けである。

1曲目は、江戸時代に遊郭へ売られた女性を主人公とした「公然の秘密」。重厚なメタルサウンド調のバンドアレンジに乗せ、自身で作成した白を基調とした衣装に身を包んだ橋爪はしっとりとしたファルセット、妖艶な吐息を交えながら情念の世界を立ち上げていく。かと思えば、「自由」「リセット」では一変して弾けるような笑顔を浮かべ、超満員の観客は手拍子と歓声を惜しみなく送り、会場は一体感に包まれた。この後のMCで橋爪が「1曲1曲の世界に皆さんをお連れする添乗員」と自らを評した通り、短編詩のような自作の〝枕詞″による曲紹介を交えながら、オーディエンスを時空を超えた心の旅へといざなうことになる。

<君が嫌いだ>と感情を暴発させる「自己愛性障害」、それと対を成す「依存未遂」を2曲続けて披露し終える頃、橋爪の虚空を見つめる眼差しには何かが憑依しているかのような凄みが宿っていた。大拍手が鳴り止むと、静寂の中独唱し始めたのは「夢現」。めくるめく転調と高低を行き来する難解なメロディーを、橋爪は驚異の歌唱力と表現力で歌い上げていく。バンドアンサンブルはぴったりと歌に寄り添い、照明演出もシンプルながら絶妙。子を喪った母の痛みと切なくも美しい回想、葛藤を経て再生へと向かう長い時間経過を、ほんの5分の中で見事に表現していて、息を呑んだ。

初めて自作した記念すべき曲「ヒーロー」、〝もう一人の僕″をつくり出さざるを得なかった内面世界が伺えるロッカバラード「ドッペルゲンガー」と続け、心地よい歌の世界に酔わせると、フリートークへ。2年半継続中のレギュラーラジオ『橋爪ももの生乾き放送~終わりよければ~』(NACK5)内の「あなただけのマジョリティ」コーナーを〝出張開催″し、「お店で顔を覚えられるのが苦手」という打ち明け話を展開。歌唱中とはまた違った軽妙な語りとテンションで、大いに笑わせた。ラジオ番組のテーマ曲「M」へと続け、その後は「女の子が女の子に恋をしたお話でございます」との曲紹介から「甘い娘」へ。恋焦がれ相手を求める生々しい煩悩を、甘くキュートな歌声に乗せ白日の下に晒していく。ここまでに披露した曲の主人公たちを優しく包み込むかのように、すべての想いを「肯定し続けたい」との語りから届けたのは「天国への土産話」。ゆったりと体を左右に揺らしながら、柔らかい声色で<どんなあなたにもなれる>と歌う姿は慈しみ深い聖女のように見えた。

「最後になりますが…」と切り出した橋爪は、フロアから「えー!」と驚きの声が上がるのをなだめつつ、アルバム制作とワンマンライヴ開催にあたり力を借りた関係各所に律儀な謝意を述べた。そして、アルバム収録の12曲には「主人公がいる」と言いつつも、橋爪自身の気持ちも投影されていることを吐露。ぶちまけた本音は「受け止めてくれる人たちがいて初めて昇華される」とも語り、「私の本音は今日、尊いものになりました」とオーディエンスの存在に感謝した。問題を抱えた人が、同じ熱量で向き合ってくれる相手と出会って息を吹き返す物語、と紹介したのは表題曲「本音とは醜くも尊い」。気怠くブルージーに始まり、やがて光に向かって走り出していくような昂りを見せる圧巻の1曲だ。魂の絶唱とでも表現したくなるような渾身の歌声に、強く胸打たれずにはいられなかった。


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